熊楠が「書く」ときには、かならずしも記憶に頼って楽々と引用していたわけではなかった事実が重要である。もちろん彼は、データのおおくを精確に記憶していたにちがいないが、なにかを書くときには再確認することを怠らず、かなりの苦労をして出典にあたろうとしている。
(中略)
たしかに熊楠は、みずからの記憶力に絶大な自負をもっていたが、それを過信することはなかった。彼の記憶は、たえまなく鍛えなおされ、更新されていたのである。
松枝到「写字生熊楠」(『ユリイカ』1992年7月号 特集=南方熊楠)p.124
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